
「自分がやった方が早い」
「これはちょっと説明しづらい」
「スタッフに任せているけれど、最終的には私が確認している」
そんな仕事はありませんか?
経営者の方とお話ししていると、
「仕事を手放したいんですけど、何を渡せるのか分からなくて…」
という言葉を聞くことがあります。
これは、とても自然なことだと思うのです。
なぜなら、経営者の頭の中にしかない仕事というのは、経営者自身にとっては「当たり前のこと」だからです。
いつも自分がやっている。
いつもこのタイミングで確認している。
この場合はこうする。
それが自分の中では当たり前のルールになっているので、
そもそも「これは属人化している仕事だ」と気づくこと自体が難しいのです。
ミギアシでは、そんな経営者の「当たり前」を質問しながら一つずつ外に出していくことを大切にしています。
今回は、実際に業務整理するときの考え方を基に、経営者の頭の中だけに留まっている仕事を見つける「5つの質問」をご紹介します。
質問① 自分が1週間休んだら、止まる業務は?
まず一つ目に考えていただきたい内容は、
「来週から1週間、完全に仕事を休むとしたら何が止まる?」
ということです。
パソコンも開かない。
会社や店舗にも行かない。
仕事のLINEも見ない。
その状態を想像してみてください。
例えば、
「銀行への振込ができない」
「次のSNS投稿の内容が私の頭の中にしかない」
「スタッフが判断に困ったとき、私以外に聞ける人がいない」
など、いろいろ出てくると思います。
ここで大切なのは、自分が作業している業務だけを探さないことです。
例えば、SNS投稿の画像制作や投稿作業自体はスタッフに任せているとします。
でも、「次に何を投稿するかは社長しか知らない」
という状態の場合、社長がいなくなると業務は止まってしまいます。
つまり、作業をしていなくても、
【経営者がいないと止まる業務は、まだ経営者に属人化している可能性がある】
ということです。
「来週1週間、私がいなかったら、現場で何が困るだろう?」
そのような視点で、まず一度考えてみてください。
質問② 「あ、そういえば」と思い出している業務は?
次も、ぜひ見つけていただきたい業務です。
「請求書出さなきゃ」
「そろそろ来月のシフトを確認しなきゃ」
「在庫見なきゃ」
「そろそろ発注しなきゃ」
この「あ、そういえば」という業務です。
カレンダーに入れるほどでもない。
タスク管理ツールに登録しているわけでもない。
でも、なぜか毎週、毎月、自分が思い出してこなしている。
こういう仕事は、実は思った以上にたくさんあります。
そして私は「自分が思い出す」ということ自体が、業務フローの一部になっていないかをチェックしていただききたいと思います。
「そろそろだな」と思い出すことだけでも、私たちは小さくエネルギーを使っています。
ですから、この1週間「あ、これやらなきゃ」と思った瞬間があったら、
その場でひとこと記録を残してみてください。スマホのメモでもOKです。
それだけで、今まで見えていなかった業務が出てきます。
質問③ スタッフから「これ、どうしますか?」と聞かれることは?
三つ目は「これ、どうしますか?」と聞かれている仕事です。
もちろん、本当のイレギュラーであれば経営者の判断が必要なこともあります。
でも、同じようなことを何度も聞かれているのであれば、それは本当にイレギュラーなのでしょうか。
例えば、
「このお客様にはどう返信しますか?」
「これは掲載しても大丈夫ですか?」
「この場合は返金しますか?」
「この金額なら仕入れても大丈夫ですか?」
飲食店であれば、野菜など日々価格が変動するものについて、
「今日はこの価格ですが、仕入れますか?」
と毎回確認されているケースもあるかもしれません。
こうした質問が来たら、まず記録してみましょう。
すると、
「○円以下ならスタッフ判断で購入していい」
「この条件なら返金対応する」
「この内容なら確認なしで掲載していい」
といった判断基準をつくる思考が見えてきます。
スタッフから聞かれる質問は、経営者の頭の中にある判断基準を、外に出すためのヒントでもあるのです。
質問④ 誰かに任せているのに、結局自分が確認している仕事は?
四つ目は、すでに外注したりスタッフに任せたりしている仕事です。
一例を挙げると、
SNS制作は任せている。
でも、投稿前に全部自分が確認する。
資料作成は任せている。
でも、毎回細かくチェックする。
顧客対応もお願いしている。
でも、送信する前にすべて自分が見る。
こういった仕事です。
ここでお伝えしたいことは、
「経営者が確認するのはダメ」ということではありません。
大切なことは、
「私は、なぜこれを確認しているんだろう?」
と考えてみることです。
ブランドの世界観を守るため?
金額に関わるから?
重要なお客様だから?
大きなリスクがあるから?
それとも、
今までずっと自分が確認してきたから?
理由が分かれば、
「ここだけは自分が確認する」
「この条件ならスタッフの判断でOK」
と、確認する範囲を整理できます。
なんとなく全て確認している状態から、
自分が本当に確認すべきものだけを見る状態に変えていく。
これだけでも、頭の中から手放せる仕事は増えていきます。
質問⑤ 「なんとなくこうしている」仕事は?
最後は「なんとなくやっている業務」です。
「なんで3日前に確認するんですか?」
「なんとなく、いつも3日前ですね」
「なんでこのお客様にはこの対応なんですか?」
「なんとなく、この方の場合はこうしています」
「なんでこの文章はNGなんですか?」
「なんとなく、うちらしくないから」
こういった類のことです。
一人で仕事をしているときは「なんとなく」でも問題ありません。
自分自身が判断して、自分自身が動くからです。
でも、事業が大きくなって、誰かに仕事を渡そうとすると、この「なんとなく」が伝わりません。
だからといって、私は「なんとなくで仕事をするのはダメ」とは思っていません。
むしろ、その「なんとなく」を大切にしてほしいと思っています。
なぜなら、
経営者の「なんとなく」の感覚には、その会社が大切にしてきた判断基準が隠れていることがあるためです。
なぜ、この文章に違和感があるのか。
なぜ、このお客様にはこう対応したいのか。
なぜ、3日前には確認しておきたいのか。
それらの「なぜ」を一つずつ言葉にしていく。
そうすると、今まで経営者の感覚の中にしかなかったものが、少しずつ形を成して、他の人にも渡せるようになります。
まずは1週間、観察してみる
ここまで、頭の中を整理するための5つの質問をご紹介してきました。
業務を手放そうと思うと、
「まず、自分の仕事を全部書き出さなきゃ」
と思うかもしれません。
でも、その作業はかなり大変です。
普段当たり前にやっていることを、一度に全部思い出そうとしても、なかなか出てきません。
だから私は、もっと簡単なところから始めてもいいと思っています。
まず1週間だけ、自分の仕事を観察してみてください。
その中で「あ、そういえば」と思い出した。
スタッフから「これどうしますか?」と聞かれた。
任せている仕事を自分が確認した。
「自分でやった方が早い」と思った。
「なんとなく、こうしているな」と気づいた。
そんな瞬間があったら、一行だけメモしてみる。
1週間後、そのメモを並べてみると、
今まで見えていなかった「自分の頭の中にしかない仕事」が見えてくるはずです。
すぐに全て手放さなくてOK
そして、見つかったからといって、全部を手放す必要はありません。
以前の記事でもお伝えしましたが、仕事は大きく、
① 経営者にしかできない仕事
② 判断は経営者がするけれど、作業は任せられる仕事
③ 判断ごと任せられる仕事
に分けて考えることができます。
今回見つけた仕事も、この3つに当てはめてみてください。
「これは、やっぱり私が持っておきたい」
という仕事があってもいい。
「ここまでは私が判断するけど、その先はお願いできそう」
という仕事もある。
「これ、そもそも私が考えなくてもいいかも」
という仕事も見つかるかもしれません。
大切なのは、すぐに手放すことではなく、
まず、自分の頭の中に何が入っているのかを知ることです。
「経営者に戻ってくる仕事」を拾ってみましょう
経営者の頭の中にしかない仕事は、自分ではなかなか見つけられません。
なぜなら、自分にとってはそれがあまりにも当たり前の仕事だからです。
だから、最初から完璧な業務一覧をつくろうとしなくてもいいのです。
まずは日常の中で「経営者の頭に戻ってきた仕事」を拾ってみましょう。
・思い出した。
・聞かれた。
・確認した。
・判断した。
そこには、まだ「経営者の頭の中に残っている仕事」があるでしょう。
そして、その一つひとつを外に出していくことが、仕事を手放し、経営者ご自身の時間と頭の余白をつくる最初の一歩になります。
ぜひ、明日から試しに1週間。
「あ、これ私しか分からないかも」という業務を集めてみてください。
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